地味な女子の読書とか映画とか。

現在、海外暮らしのため 不定期に更新しております。本が読みたい。
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有吉佐和子:非色

非色
有吉 佐和子

角川書店
1967-11

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優越感と劣等感
敗戦後の日本。駐留軍向けのクラブで働いていた笑子は
黒人兵のトムと知り合い、恋に落ちた。
戦勝国の輝きに満ち溢れていたトムとの生活は
日本では贅沢な暮らしだったけど・・・・。

日本で生まれた娘バーバラを連れて歩くと、人々からの
好奇の視線が突き刺さる。
駐留軍からの品物やそれらを横流しして豊かな暮らしをしていた
笑子の母親や妹は、結婚・出産には大反対。
こんな日本では暮らしていけない!
一足先に、アメリカに帰っていたトムを追いかけて
笑子とバーバラは自由の国、アメリカ・ニューヨークに降り立つが
そこは、黒人が差別され、貧乏にあえぐ世界だった。
日本では生き生きとしたトムも、輝きを無くし掃除夫として働いていた。
地下室のような部屋に暮らし、
笑子は一家を養うために日本食レストランで働く。
そこには、様々な人種の人間と結婚した
「戦争花嫁」の日本人の溜まり場だった。

白人は黒人を差別する。
そしてその黒人ですら、イタリア人やプエルトリコ人、ユダヤ人を
差別する。
最初は日本人として笑子に接する人々も、
笑子が黒人の女房だと知った途端に、目線を下げる。
笑子自身は、「なんで差別するの!同じ人間じゃない?」と思い、
プエルトリコ人の妻や、イタリア人の妻などとも
接するが、やがて自分の心の中にも
「プエルトリコよりもマシ」と思う気持ちを発見する。
中には、日本の故郷に成功した姿の写真を送ることによって
かろうじてプライドを保った女性もいる。

もちろん時代も違うし、日本のような島国に住んでいると
わからないのだけど
差別というのは複雑に絡み合った世界なんだなぁと思う。
最初は「黒」だから差別されるのだ、とそう思っていた笑子だけど
多分、色ではないんだと考える。
アフリカの新興国の黒人達は、アメリカにいる黒人よりも
自分達が上だと思っていた。
(いまでは逆もあるらしいけど)

金持ちは貧乏人を哀れみ、美人は不細工を哀れむ。
頭のいい人間はそうじゃない人間をバカにするし
この全てに対して逆の考え方もあるだろう。
普通に生活をしていくだけでも
そういう風に常に相対化した状態で、自分や他者の位置を確かめる。
それは常に優位性だけではない。
差別という形であらわれなかったとしても
「××よりもマシよねぇ」とか思うもんなぁ。普通。
逆に「××さんは美人だけど、私は不細工だからこんなメに遭う!」みたいな。(え?
それは自分の意識だけの問題ではなく
周りからそう判定されてしまうことにより蓄積されるものも多い。
だから、他者によって差別されつづけた人間は卑屈になるだろうし
常に優位性を他者からつけられていく人間は傲慢にもなる。
日本で昔からある部落差別?も、結局、上に反感を持たないように
下を作る、当時の政策から始まってんだもんね。
逆に「文化大革命」は、人間の隠れた劣等感を
顕わにしてしまうことで、盛り上がってしまった感じもする。

ただ、人種や国籍に関することはわたしにはわからないんだな。
前にも書いた気もするけど
言葉が通じない、育ってきた土壌が違うことによって
更に理解できないものというのは、絶対あると思うし。
それが「何考えてるのかわからへんから怖いわ」っていう
そういうのはねぇ、あると思うのよ。
後は単純に見た目の問題とかさ・・・。
だけど、だからと言って「自分より下」などと思うかどうかは、
その人一人一人の問題だけどね。


この本の中では、そういう下層の生活の中、
笑子や、関西人の竹子がものすごい生命力を発揮する。
その逞しさは読んでいて気持ちのいいほどだ。

有吉さんのこの本、有吉さんにしては珍しく
「私」という一人称で物語が紡がれている。
で、それと綿密な取材のおかげで
笑子がまるでこの本を書いたような作りになっている。
ハーレムの中で暮らし、働き、方向を見つけていく笑子が
まるで目の前で息づいているようだ。



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