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司馬遼太郎:歳月

歳月
司馬 遼太郎

講談社 1971-07

おすすめ平均

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卓抜した論理と事務能力で、明治維新の激動期を、司法卿として
敏腕をふるいながら、非業の死をとげた江藤新平。
明治6年征韓論争で、反対派の大久保利通、岩倉具視らと対決、破れて下野し、
佐賀の地から明治中央政府への反乱を企てる人間江藤の面目と、
その壮絶な生涯。


あ、あうあうあう。SAGA・・
司馬遼太郎の幕末物を読むとさ、
「っかー!もったいねえ!生まれる時期が早すぎ!そして死ぬのも早すぎ!」
と思うことが多い。
坂本竜馬はもちろん、高杉晋作も、土方歳三も。
もうちょっと時代が落ち着いたり、もうちょっとだけでも長生きしてたら
世界を駆け巡ることができたんじゃない?と思う。
そう思うんだけど、まぁ逆に考えれば
そういう時代じゃなかったら出てこなかった人達なのかもしれないねぇ。

そういう意味ではこの江藤新平という人はその最たるもんじゃないかと思う。
日本史の教科書では維新直後に、西国で起こった乱
萩の乱や神風連の乱、西南戦争と同列に乗っている佐賀の乱。
そこでしか江藤新平の名前は出てこない。

ものすごーく身分の低い家に生まれて。
ただ、人並外れた頭脳を持っていたために
「佐賀は俺が変える!」と信じていた新平。
周りの人が聞いてたら笑ったろう。そもそも役人にもなれんって。
そしてある日、脱藩する。
京都に行って、幕末の志士たちとほんのり知り合う。
そこで、情報収集をして、
脱藩はほぼ死罪と知りながら、帰藩する。
本来なら死罪。ただ、藩主に差し出すために書いた意見書が
奇跡的に藩主の目にとまり、死罪は免れる。
当時の佐賀というのは、藩主の鍋島家が先進的であり
お金も最強の軍隊も持っていた。
でも、幕末の混乱に藩の人間が巻き込まれることを極端に恐れて
藩から出てはいけない(普通なら旅行とかできるんだろけど)
藩以外の人間と口を利いてはいけない、と
佐賀藩だけ更に鎖国!みたいな状態だった。

だから逆に薩長なんかは佐賀がどう動くかというのを常に知りたがっていた。
薩長にも軍隊はあるけど、最強という噂の佐賀の軍隊を借りたい、とか
思うところはいろいろあったんだろう。
だけど、佐賀人と知り合いになれない。
そして佐賀人も、鎖国しすぎちゃって、どこについてどういう動きをしていいか
だんだんわからなくなってきたところだった。

で、幕末の混乱、そして大政奉還などなどの時期、
新平は佐賀で幽閉生活を送っていた。
つまり、なんにも参加してないわけ。
でも、さっきのような佐賀の状態が新平を連れ出した。
佐賀人で、唯一京都で志士達と交わった経験と
ずば抜けた彼の頭脳を信じて。
彼の使命は佐賀藩の名前を薩長と同じ地位に連ねること。

貧乏な半生から一転、藩の名前を背負って再び京都、そして東京へ。
そこから新平は凄い勢いで出世街道をひた走る。
新政府の人間になった新平の頭脳は
近代国家らしい法治国家に日本を作り上げること。
ようやく外遊する人々が出てきた時代、
新平は彼らからの話、そして書物だけで
まるで見てきたかのように詳しく、海外事情に明るい人間になった。

でも、まだ新政府っつっても戊辰戦争が終わるか終わんないかの頃。
新政府自体が国民に認知もされてなかったし
志士あがりの大久保利通や西郷隆盛、山県有朋に
井上馨、伊藤博文が、独断専行していた時代。
私欲もなく、ただただ法律ラブ!正義命!と思っている新平は
彼らにとってはだんだん邪魔な存在になっていく。

長州出身の官僚達は、お金にうるさくて
井上馨や山県有朋なんかは、自分の財布と国の財布を平気で
ごっちゃにできる人々だったわけ。
これは、彼らがやらしい人間というわけではなく
それぞれのお国事情も絡んでくるんだろうけど、
新法治国家としては(新平の中では)
もちろん横領だったり贈賄だったりするわけです。
だからそこを警察権、法律権をもって、びしっと追い詰めてしまう。
まぁ彼らはうまいこと逃げるんだけど
その時点で彼らにとっては新平はうるさい人間だ。

そして人材のいない新政府としては多少悪事に手を染めてても(?)
彼らを葬ってしまうわけにはいかない。
しかも、幕末の風雲を知らない(つっても幽閉されたんだけど)
新平ごときに!
そして新平は、全ての根悪は薩長にあると観て、
その派閥自体を壊してしまおうと考える。
そこから大久保利通とのバトルが始まっていくわけです。
しかも佐賀なんて閥は無いに等しいから
ほとんど孤独な戦いになっていく。

新平さぁ、すっごい賢い人なんだよ。
賢いんだけど、なんかいまいち抜けてるっつーか。
最初の頃はそれも司馬遼得意の『男の愛嬌』?とも思ってたんだけど
なんかだんだん最後の方は悲しくなっちゃうんだよねぇ。
なんでそうするの!って。
どんどん悪い方へ(大久保の罠?)に転がっていっちゃう。
あんたはそこでそんな罠にひっかっかってる場合ちゃうやろ!って。
愛嬌が命取りというか…

35歳で、世の中に出て、そして5年で司法卿となり、
そして41歳で、曝し首になる。
その間、たった6年。すごいよなぁ…。
結果としては、大久保が作った日本に(途中で1回壊されたけど笑)
私たちはいるわけで。
新平が生きて、頑張ったらどうなったか?
実はそんなに変わんなかったのかもしれないけど。
なんか、すっげえもったいないのよ。
この人のこのエネルギーが。


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読書感想「歳月」 歳月 【評価】★★★
読書感想「歳月」 | 三匹の迷える羊たち | 2005/12/05 9:17 PM
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歳月 | 司馬遼太郎を読む | 2005/12/05 10:49 PM
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