地味な女子の読書とか映画とか。

現在、海外暮らしのため 不定期に更新しております。本が読みたい。
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山崎豊子:花紋

4101104077花紋
山崎 豊子

新潮社 1974-08

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ろうたけた美貌とたぐいまれな才を宿し、大正歌壇に彗星の如く登場し、つかの間の輝きを放って
突如消息を断った幻の歌人、御室みやじ。河内長野の大地主の総領娘として、過酷な因習に
抗いながら、国文学者荻原秀玲との宿命の恋に全てを賭け、略伝に夭折とあるように、自らの生を
まで世間から葬り去った、激しい情熱と苦悶に貫かれた彼女の半生を重厚な筆致で描く長編。



こ、怖いってー。この女!
「わたし」という少女が、戦争も終わるころに疎開した
御影の豪邸。兄の友人という伝手を頼って寄宿したその家には
女主人と一人の老婢だけが暮らしていました。
戦時中にもかかわらずゴージャスな食生活をしている女主人の
素性もイマイチ謎のまま、暮らしていたある日、空襲が起こり
「わたし」がふらりと近寄った土蔵の奥から
「郁子…許してくれ…」という男性の叫びが聞こえてくる。
それを二人に言っても、彼女達はそれを認めない。

戦争が終わり、彼女もその家を出て生活始めたころに
あの家の老婢から一通の手紙が届く。
あの女主人が死んだこと。そして土蔵の謎を知ってしまったあなたに
女主人の一生をお話したい、と。

そこから女主人葛城郁子、または歌人御室みやじの物語が始まった。


河内長野の大地主の総領娘に生まれた郁子。
愛情にも恵まれ、彼女の美貌や才能は幼い頃から評判だった。
かわいがれ、多少気が強くわがままな娘郁子のお守り役として雇われたよし。
「よしにだけは教えてあげる」そう心を許す郁子に
よしは一生ついていこうと心に決める。

その葛城家は、夫婦と郁子姉妹とは別に祖父が外に生ませた娘が3人一緒に
暮らしているという奇妙な家族。
やがて母親がその妾腹の娘葉子に騙されて、家を追われてしまう。
その一部始終を見ていた郁子は、どんどんと家族から心を離してしまう。
新しい母親や葉子との諍いに疲れ果てた郁子は
離れに住まい、家庭教師の薦めによって歌を作り出す。
家庭教師が紹介してくれた雑誌に投稿するうち、彼女の存在は
「河内長野の姫君」などと評されるようになる。
やがて、その雑誌の仲間であり師匠のようでもあった
荻原秀玲という男性と知り合い、二人は想いを寄せ始める。

しかし、郁子は大地主の総領娘の身。
家を継がなければならないし、養子をとらなければならない。
祖父や父親、継母などが様々な話を持ってくるが、
彼女は頑として受け付けない。
秀玲自身も仙台の大地主の息子だったけど、文学の研究への道を
進みたくて家督を妹に譲ったほどの男だったから
婿養子になって、郁子の家を継ぐなんてことは考えられなかった。
話は一向に進まぬまま、秀玲は外国へと留学してしまう。
それと前後するように、郁子も結局婿養子を迎えることに。

でも惚れて一緒になったわけでもないので
婿養子に対して、彼女は非情なほどの冷酷さで接する。
好きでもないんだから、彼の一挙手一投足が気に入らない。

とはいえ、この秀玲って男もなんか嫌だし
婿養子もかわいそうな気がするなぁ…。

郁子宛の秀玲の手紙は継母に破られたりするし
郁子の住んでいた庵を婿養子が焼いてしまったり
なんでこいつらひとつ屋根の下に住んでるんだろう?
という憎みあいの日々。

そして郁子は秀玲への想いを捨てるためにも
河内長野の歌人「御室みやじ」の名を捨てることにした。

婿養子もその後、郁子の手によって廃人扱いされ
土蔵に監禁されてしまったりする。
彼自身はただの小市民で、こんなところにさえこなければ
こんな扱い受けなかったのになぁ。
ちょっと張り切って何かやろうとしても
妻の冷たい視線と「総領はわたくしです」ってセリフが…

そしていくら気に入らなくて、でも離縁できないからって
こういう扱いをしてしまう郁子の傲慢さはただ驚愕だ。
でもそれは大きな家に住む人々が少なからず
持ち合わせていたものなのかもしれない。
ただ「船場」の女系家族が意に染まぬ婿養子でも淡々と受け入れて
それでいて傲然としているのを読んでいたら
郁子の行動は、不自然というか。
それもまたプライドなのかもしれないけれど。
そして結局、葛城家は没落した。
誰のせい、ということではないけれど。
郁子は、恋を守りたかったのか、歌を守りたかったのか
家を守りたかったのか、それとも自分か。
それがわかりそうでわからない。


そういうことを、「わたし」は老婢の話、そして郁子の日記、
仙台で隠遁生活を送っていた秀玲を探し当てて
それらをつなぎ合わせていく。
こういう金にもならんことを(笑)ただやっていける環境というのに
ちょっと憧れるんですけど、わたくし。


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