…芥川賞というのは、ちんたらした人間の日常、つまりは
作家及び、同年代の人間の話を書いた小説が多いってことは
前々から思ってたんだけど。
つまり、日記みたいなもんだ。
もちろんそれ以外の場合もあるんだろうけど
「現代の若者の姿が…!」みたいな注目のされ方が多い。
村上龍にしても石原慎太郎にしても。
綿矢りさや金原ひとみ。柳美里も。
でも時にそうじゃない場合もある。
とこの本読んでしみじみ思ったよ。
つーか、時代設定から現代じゃないものー。
文章も、なんか違うものー。
なんだ、この人は。面白すぎるじゃないの。
何考えてこういう物語を書いたんだろ。
そして何でこういうものをこういう文章で書けるんだろう。
物語自体は、かつてあったようなストーリー(らしい)。
私は、昔の西洋的なこういう話(錬金術とか)に詳しくないので
興味深かったけどね。
自分の研究に没頭する仙人のような(?)人間や
白痴の少年。下卑た男。
欲にまみれた司祭。
そういう存在は、こういう話には不可欠な存在なんだろう。
そういう「ありきたり」な存在が、
彼の文章によって、その存在感を増幅される。
森で一人、無音で笑って踊っている少年の一種の不気味さ。
研究にまい進することで、自己研鑽を積んだ人間の凄烈な佇まい。
弱いものを見つけては大騒ぎする村人の無知な暴力さ。
文章の中に散りばめられた、多くの漢字(読めねえっつの)が
その存在をぎらぎらと乱反射する。
この本のタイトルの「日蝕」にしても
「日蝕」と「日食」では受け取るイメージが違う。
現象としては同じことだけれど。
まるでステンドグラスが万華鏡になったような。
その回転する光にあわせて大音響でバッハのオルガン曲が
流れているような。
想像したら不必要なほどうるさい光景…。笑
病気の理由も、天災の理由も
化学の力も、何もまだわからなかった時代。
だからこそ無知なる人々は、小さなものにも怯えるし
それらを何の疑いも抱かずに
排除しようとするエネルギーは激しいものだ。
そういう世界が面白かったなぁ。
西洋文化(笑)に詳しくないわたくしは、
これでちょっと興味を持ちましたよ。
ま、多分この本の世界の半分くらいは理解できてないと思うの。
そう思うのは、彼がわたしと3つしか変わらず
九州の田舎町から3年差で京都に出てきて…と思うからかなぁ。
うわー、見てみたーい。
絶対この人変人やと思うの!←ほめ言葉
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この記事に対するコメント
予想に反して平野は全然「お文学」界隈から出てきませんね。もっと政治やら社会やらに関して発言するようになるかと思ってたんですが。まあ迂闊な発言でキャラクターを破綻させるよりは黙ってたほうがいいんでしょうけど。ひょっとして編集者が止めてるのかな。
それにしても時が経つのは早いものです。最初に彼の芥川賞受賞のニュースを見たとき同い年ゆえか即「いくら入ったんだ?」とか下世話な事を考えてしまい反省したのももう六年も前のことなのですね。
■slashさん
>予想に反して平野は全然「お文学」界隈から出てきませんね
おおう、なぜだい?
ハードカヴァのエッセイ集では
そういう部分もちょこっと触れているみたいだけど。
彼はライフプランというかイメージ戦略(?)をかなり先まで考えてるっぽいね。
まぁそうじゃなきゃ最初の作品に
ああいうものは書かないと思うけど。笑
いやー、やっぱ京大は頭の出来が違うのかねー
ちなみに芥川賞の賞金は100万円。
ただ彼の場合は投稿した「新潮」で
一気に巻頭掲載されてるし
その後、文藝春秋にも載せてるし
その原稿料もあるだろうなぁ。
評判になったから本も何万部かは売れてるだろうし…
と電卓を叩いてみる。笑