地味な女子の読書とか映画とか。

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瀬戸内晴美:恋川

恋川恋川
瀬戸内 晴美

角川書店 1975-02

おすすめ平均

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「わては女たらしやおまへんで。へぇ、いっぺんも女をたらしたろ思うて、誘惑したことおまへん。こりもせず、次から次に、女を好きになってしもうて、気がついたときには、女に夢中で惚れ抜いている。……どの女も、女はみな浄瑠璃の中から抜け出してきたようないとしい心を持っております」
 文楽人形の女を遣って華麗な芸を示し、人間国宝となった二代目桐竹文十郎は、泉州堺に生まれ、明治の末、九歳で名人吉田文五郎に弟子入りした。以来、厳しい芸道修行のかたわら、色の苦労を芸のこやしとした彼が、生涯を通して愛した、様々な女たち。浄瑠璃の世界そのままの、その恋の激しさと苦しさ。……艶麗な筆致で奔放な紋十郎の一生と女たちの恋の妄執を綴る、著者会心作。


 芸と恋と…
 相変わらず芸の世界はさっぱりわからないのですが。こういう芸人ど根性物語っていうのは大好きです。
 まぁ生きてる芸人さんの場合は今日び恋愛話なんてしないけれども笑。
 そしてこういう世界を愛やら欲やら激しい苦しい…なんていう単語を織り交ぜながら書かせると寂聴さん以外にいないわけで。
 
 まったく文楽なんかに縁がない生活をしていた男の子が、ふとしたときに連れられた文楽のっ舞台。その夜から、彼の夢には夜な夜な人形が現れる。
 人形に魅せられてしまった少年は頼み込んで、一座に弟子入りする。(これがすごいよな。9歳で)
 その世界はあまりにも厳しい。夜明け前から夜中まで。
 9歳の子供にとっては眠たいし、お腹もすく。
 で、ちょっとでもぼーっとしてたら、舞台の下で師匠の足蹴りが飛んでくる。

 そこまでして修行しても、TOPにたてるのはほんのわずか。それもずいぶん年寄りにならなければ難しい世界。
 そしてお金もほとんど入らない。皆、家族や妻の稼ぎで実際は食べている。
 それでも人形に魅せられてしまった人たちは、もうその世界から帰ってこれないんだよ…
(書いててホラーかと思いました。笑)

 まぁ努力とセンスの甲斐あって紋十郎はだんだん頭角を現してくる。
そして女受けするタイプであった紋十郎の女性遍歴もはじまるわけです。

女性遍歴もなかなかおもしろいんだけれど、やっぱ時代がね!時代が面白い。
人々のとっての娯楽が観劇だった時代。
「伝統」芸能、ではなくて芸能、だった頃。
今の時代にこれを読んでも、「そんなんちっさい誰もわからへんような世界やん」と思うけど
当時は多分、今のアイドルのコンサート(?)やTVドラマのようなもんだったんだろう。
今様は当時のROCKだ!とか言うもんな。
だってTVもラジオもないねんで。
だからみんな彼に興味を持ったし、時代が彼を押し上げた。
絶頂の頃から、やがて時代は暗い時代に突入する。
どんどん若い人間は徴兵され、一座の維持も難しくなってくる。
ただでさえ、今日食べられればそれでいい、というくらいのお金しか稼げない仕事。
蓄えもあるはずもなく、一座の人間はどんどんと脱落していく。
 やがて戦争が終れば、今度は自由と権利の名のもとに組合闘争がもちあがる。
かつての時代のやり方を維持したい親会社と、安定した給料を求める一座。
舞台小屋からも追い出され、文楽の一座も分裂してしまう。

 紋十郎の話はドラマティックであり、軽快だ。
それと相反するように、紋十郎の弟子の蝶二郎の恋の話が重い。
年上の女に甘えるように付き合っていた蝶二郎。でもやがてそれが重くなって
女を捨てる。
縋れば縋るほど、邪険に扱われる女は、何を恨んでいいのかわからないまま、
積もったうらみを…お百度参りで…何を参っているのか…ガクブル。
 
 何の本だったかすっかり思い出せない鳥頭なんだけども(ノД`)・゚・
何かの本で、芸のこやしになるはずだ!ってめちゃくちゃな生活してたんだけど
最後に「俺、実はそういうの苦手やねん。でもこやしになると思ってやってた」って
話があって、確かにそうだよなぁと思ったことがある。
まぁ芸人じゃなくても、人生経験を積みたい!と思って色んなことに手を出すのと
はからずも巻き込まれた人間とは多分受け止め方が違うだろうしさぁ。
 女の人形を遣っていた紋十郎が女性遍歴の中で手に入れたもの。それは女性のふとした仕草のひとつひとつ。そして女達の感情だ。
 でもそれは手に入れようと思って近づいても手に入らない。
紋十郎のように、本気で相手に惚れて、相手をしっかり見つめていないとできないことだ。
人の悲しみ、人の喜び、人の苦しみ、それに自らも巻き込まれないと手に入らない。
失恋の気持ちがわからないからって失恋しようと思う人がいないようにさ。
(それは失恋ではないだろうし)
一緒に駆け落ちしようとした女。自分の腕の中で死んでいった女。
そして全てを飲み込んで、家族を養い続けた奥さん。

実在の人物の物語で(もちろんフィクションも入ってるだろうけど)
寂聴さんは何度も彼に取材して物語を連載し続けた。
そしてそこに入ってきた、彼の訃報。
物語の流れの途中に、いきなり彼の死の章が入ってきて切ない。

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