地味な女子の読書とか映画とか。

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水村美苗:本格小説

本格小説〈上〉本格小説〈上〉
水村 美苗

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本格小説〈下〉本格小説〈下〉
水村 美苗

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ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちとなった伝説の男・東太郎の過去を、祐介は偶然知ることとなる。伯父の継子として大陸から引き上げてきた太郎の、隣家の恵まれた娘・よう子への思慕。その幼い恋が、その後何十年にもわたって、没落していくある一族を呪縛していくとは。まだ優雅な階級社会が残っていた昭和の軽井沢を舞台に、陰翳豊かに展開する、大ロマンの行方は。


たろちゃん…(ノД`)・゚・
いっやー、面白かった。びっくりした。
かっこーさんが繰り返し書かれていたので、
タイトルだけは常に心にあったんだけども。
こんな面白いとは思わなかった。早く読めば良かった!

12歳でアメリカに渡り、大学院で日本文学をぼんやりと教えている
作者のもとに、一人の青年がやってくる。
その青年が語る、夏に出会った一人の男性の物語。
その男性、東太郎は、20年以上前に作者の家にやってきたことのある男だった…。

最初は、作者自身の話。
アメリカに育ったけれど、日本への思慕を捨てられない少女。
英語もろくに喋ろうとしないで、日本の小説を読み漁る日々。
そんな鬱屈とした日々の中、父親が連れてきた一人の青年。
それが東太郎だった。
貨物船に乗り込んで、単身アメリカに渡り、
富裕者の運転手として生活を始める。
やがて、彼女の父親が働く会社に雇われて、不断の努力と器用さをもって
アメリカ社会でのし上がっていく。
変わった性格から、周りから疎まれていた彼も
やがてアメリカンドリームを叶えた日本人として有名になっていく。
ただ、彼の行方は常に彼女にとっては噂を耳にする程度でしかなかった。

東太郎の話よりも、最初の方は作者自身の話で進む。
アメリカでの生活の苦痛。家族の良い時代と、悪くなった時代。
アメリカで手を取り合うように暮らしている姉の話。
日本、という家をなくし、アメリカで暮らしていかざるを得ない人々の姿。

やがて、彼女のもとに現れる一人の青年が
かつて見知っていた東太郎の話を持ってきた。
それは、誰も知ることのなかった、彼のもうひとつの姿…。

いやー、良かったよう。

貧乏な家で義理の家族に虐待されながら育った太郎。
引っ越した隣の家に住んでいたよう子。
ふとしたことがきっかけで二人は急速に仲良くなっていく。
9歳の頃。
あまりの太郎の虐待されっぷりに、
ようこの祖母は太郎も一緒にかわいがることに決める。
学校でも一緒。
学校から帰ってきても、夜ごはんの時間まで一緒。
お互いがお互いの世界の全てになっていくのに時間はかからなかった。

太郎にとっては、ようこは、女神であり宝物でもあり、絶対的な支配者でもあった。
ようこにくっついて離れない太郎はまるで子犬のように愛おしい。
喘息で苦しむようこの枕元で、頬を擦り付けんばかりに
「ようこちゃん、がんばって。がんばってね」とつぶやき続けるたろちゃんの姿は
切なくて泣けてくる。
語り手の、ようこの家の女中であったふみさんの言葉でいう
爆発せんばかりの愛情、だ。
そしてその愛情は大人のように器用には使えない。そこが、またいい。

そして当時の身分社会。
太郎ちゃんは、ようこちゃんと一緒にいるときだけは息ができるけれど
それ以外の世界に行けば、ようこちゃんとは違う世界に生きなければならなかった。
それをちょっとしたことで気づかされ続ける太郎ちゃん。
祖母が良かれと思ってたろうちゃんも軽井沢に連れて行っても
そこの親族一同の中に太郎ちゃんはもちろんいれてもらえない。
ただの使いの小僧のような扱いを受けるのね。

やがて彼らは成長する。
中学生、高校生。
二人の想いが成就しないと知ったとき、太郎ちゃんはよう子の前から姿を消す。

やがてアメリカで成功して帰ってきた太郎ちゃん。
そのときにはよう子は結婚していたけれど・・・・。

語り手である、女中の扶美さん。
三枝家の三姉妹(ようこの母親が次女)。
昔の優雅な金持ちの世界。ティーパーティにクラシック。
話言葉ひとつとっても、上品な世界。
それはちょっと鼻持ちならないほどだけれど。
そしてその上品な世界と相反する、子供のたろちゃんが住まなければならなかった世界。
扶美さんの視点は常にようこちゃんとたろちゃん、
この二人をとりまく三枝家の人々に向かって暖かく注がれている。
世の中がどんどんと変わっていって、
三枝家のような昔の世界は消え行く運命にあっても
再会したようこちゃんとたろちゃんの世界は、彼らが40歳を迎えても
いつも子供の頃と同じ。

まぁ、最後に扶美さんにはやられましたけど。笑

ようこちゃんのキャラが天然というかなんつうかすごいキャラでねぇ。
小説の主人公にはちょっといないタイプだ。
興奮すると血がのぼってキーッとなっちゃうしさ。暴走するしさ。
でも、だからなのか、たろちゃんと旦那さんと、
二人の男に最後まで愛され続ける。
この三人の関係もちょっと変でおかしい。

わたしは再会してからのたろちゃんとようこちゃんはやってないと思うんだけどさ。
それにしても、今から軽く30年くらい前の女の子が男の子にむかって
「とりあえずヤルだけやろう!」と言い放つのもすっごいなぁと思う。
天然ようこちゃん。笑

このたろちゃんの世界から戻るのが嫌で、読み終わるのんも嫌で
だけど先が気になるからページ読み進んで。
でも、この本は、最後は決して終わりではなかった。
読み終わったらまた、最初へ。
最初の頃、よくわからなかったアメリカでのたろちゃんの姿が
読み進んでいくにつれ、どんな状況でアメリカにいたのかがわかる。
傷心のままアメリカに行き、出会った日本人の少女(作者)の部屋で
見つけた文学全集。
「僕は、ずーっと昔にこれを読んだことがあります」
それは、ようこちゃんとの蜜月の思い出だったのだろう。
そして家族の中でちょっと風変わりだった少女(作者)の姿を
時には、思わずようこちゃんと重ねてしまったんだろう。

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