地味な女子の読書とか映画とか。

現在、海外暮らしのため 不定期に更新しております。本が読みたい。
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水村美苗:私小説

私小説 from left to right私小説 from left to right
水村 美苗

新潮社 1998-09

おすすめ平均

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「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカにとけこめず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国を躊躇い続けてきた。Toreturn or not to return.雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫刻家の姉と、英語・日本語まじりの長電話が始まる。異国に生きる姉妹の孤独を浮き彫りにする、本邦初の横書きbilingual長編小説。野間文芸新人賞受賞。


"Twenty years since the Exodus?"
and what if I start with"Alas!"?

哀しいけれど。
不幸ではない。
のっけからいきなり英語で始まって面食らいました。笑
まぁ、読んでたらなんとなく(10年以上使ってない英単語をフル稼働して)
慣れてきましたが…。

英語がほとんどのモノローグではじまり
また英語のエピローグで閉じる。
それはまるで、飛行機のよう。
(飛行機、というよりもスペースワールドのアトラクション…)
始まる物語は、美苗が12歳。日本からアメリカに家族で移住してきたところから。
エピソードを思い出すきっかけとして、
同じアメリカで暮らす姉からの英語交じりの電話が入る。
美苗は、最初から最後まで一人きりの部屋で閉じこもっている。
外は雪。嵐。雨。

本格小説」の「長い長い話」に出てくる作者の過去話に近い。
ちょっと父親の仕事関係の話が変わってるくらいで。
たろちゃんも出てこないし。笑

ずっと幸せな家庭だった。
姉の奈苗はピアノに励み、すぐにアメリカの生活に溶け込んでいく。
そしてまじめな父親に、社交的な母親。
美苗は、アメリカ生活になじめずに日本から持ってきた本に閉じこもる日々。

やがては帰るのだろうと思っていた日本。
仮の暮らしだと思っていたアメリカ。
時は流れ、家族はバラバラになり、
帰れる場所であったはずの日本は遠くなる。

働く、ということを考えずに、
フランス文学や日本文学を大学院を放浪しながら学び続ける美苗。
ピアノを捨て、芸術家を目指すが全く売れず、
SOHOの小さいロフトで足のつかない生活をしている奈苗。
父親は病気に倒れ、
母親はそんな父親を捨てて、男を追って東南アジアへ。

「生活者」となるには、足がつかなすぎて。
「移民」になるには、覚悟もなく。
卒業したあとの自分が見えない不安から、卒業に必要な試験を
逃げ回っていた美苗。
見る夢は、日本の夢。幼い頃の風景に、本から仕入れた古き良き時代の空想が混じる。
それが美苗にとっての日本。
そして、そんな日本は、今の日本にはない。
そんな日本に、美苗は帰る気持ちは持てないまま
自分より更に逼迫した生活を送っている姉も見捨てられないまま。

美苗たち家族と対比するように、様々な日本人が登場する。
駐在員としてやってくる家族は、「数年後に帰国」することを前提としているから
それを前提としていない美苗たちとは、生活の感覚が少し違う。
子供達は、日本の学校にすぐ編入できるようなシステムを持つ学校に通うし、
男の子だったら、日本社会に適応させるよう早めに日本に帰国させる。

奈苗のやっていたピアノの話も興味深い。
奈苗はピアノを練習し続けて、ジュリアードも卒業する。
だけど奈苗にとって、ピアノは「習い事」でしかなかった。
ピアニストとして食べていくためには、もっと上手な人が広いアメリカにはたくさんいたから。
だけど、奈苗と同じジュリアードまで行って、
ちょっと奈苗よりも上手じゃない日本の女の子は、
日本で、ピアノの先生、そしてちょっとしたピアニストとして食べていけるようになっていく。
「日本だったらあのくらいでも良かったんだわ…」という奈苗。

生まれも育ちもアメリカ、だったらアメリカ人として生きていける。
期間限定のアメリカ暮らしだったら、帰国子女として日本で生きていける。
目的を持って留学しに来たのであれば…
だけど、じゃあ、私たちは…?
望んでもいないまま半端な年頃にアメリカにやってきて
日本に戻る機会もないまま、戻るところも失って。
だけど、私たちは日本人だ。

奈苗と美苗は電話でお互いを確認しながら生きている。
孤独な日本人の姉妹。
これからどこに行こうとしているのかは、わからないまま。

美苗は、試験を受けて、卒業し、
日本にとりあえず帰国することを決める。
奈苗との電話を切って、
何日も開けてなかった部屋のドアを開けて。
そこで、20年間の異邦人達の物語は終る。

from left to right
左から、右へ。
この本は左から右への横書きになってる。
そしてところどころに英文や英単語が混じる。
日本語と英語の二つの世界。
日本とアメリカの二つの世界。

そういや、最後の方で美苗のお母さんが
「わたしも小説書いてみよっかなー」と手紙に書いてくるシーンがあるんだけど
ほんまに出してるんだね…
これ



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