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水村美苗:続 明暗

続 明暗続 明暗
水村 美苗

新潮社 1993-10

おすすめ平均

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見合い結婚した津田とお延の夫婦と、津田のかつての恋人清子の三角関係を軸に、エゴイズムのゆくすえを追究した夏目漱石の『明暗』。漱石の死によって未完のまま閉じられた近代小説の最高傑作が74年ぶりに書き継がれた。東京を遠く離れた温泉場で二人きり、久々に対面を果たした津田と清子はどうなるのか?漱石の文体そのままに描く話題の続編、遂に刊行。芸術選奨新人賞受賞。


いやー、すごいわ。
漱石さんが死んじゃったため、未完に終った、「明暗」。
その続きを書こうとすることがまずすごいや。
そして、文体もそっくり。
他の「私小説」や「本格小説」とはうってかわった文体。
文庫のときは現代仮名になってたけど、ハードカヴァのときは旧字体だったんだねぇ…。
それがまた。

前回の「明暗」のとき、私はあらすじもまともに書いてなかった。
それは、あれだけだとどうまとめていいかわからなかったから。

津田とお延の夫婦。見合い結婚だったけどお互い想いあっている夫婦のはずだった。
そこに忍び寄ってくる、様々な人々の思惑。
おせっかいの有閑夫人、吉川夫人。
中産階級を卑屈にバカにするような態度をとる小林。
兄想いであり、お延と気の合わない、津田の妹。
彼らの言動は、やがて、夫婦の間に亀裂を生み始める。

そのキーワードは、お延と結婚する前に津田が付き合っていた、清子という女性。
津田は清子と結婚するつもりでいたのに、
ある日、清子は津田の親友と結婚してしまった。
やりきれない思いを抱えているときに出会ったお延。
そしてお延だけがこの話を知らない。

何を目的にしてんのかよくわからないけれど、
この3人は、そろって清子の話をお延に遠まわしにしようとする。
吉川夫人は、ちょっとしたおせっかいで。
小林は、豊かな生活を持ち、余裕のある人間に対するひがみからか。
津田の妹は、贅沢で愛されてる生活をする兄嫁への嫉妬や妙な責任感から。

もとはと言えば、全部津田のまいた種なんだけどね…。
金使いがあんまり上手じゃなくて、すぐ実家に無心したり。
そういう情けない部分を、ちょっとの嘘で誤魔化そうとする。
それで誤魔化そうとしてしまうことが、対する人間にとっては裏切りになるんだろう。

吉川夫人は、清子がいる温泉場をつきとめ、
そこに病後の津田を行かせる。
そして、二人は出会う。
津田は知りたい。なんで、あのとき、僕を捨てたのか。
何も知らないお延は、周りの人間の発言に振り回されながら一人苦悩する。

そこで、津田が何か言えればよいのになぁ、といつも思う。
「俺を信じろ」でもよいし
全てを話して安心させても良い。
言葉じゃなくて、態度でもいい。
小さいごまかしをする津田の目は、多分いっつもちょっぴり泳いだんだろう。
それが、他人なら、誤魔化せる。
だけど夫婦だ。
「畢竟、女は慰撫しやすいものである」なんて悦に入っている場合じゃないのだ。

「なんで僕を捨てたのか」その問いに対する、清子の答えは明確だ。
だけど、それは津田には伝わらない。

人に対して、真面目に向き合うこと。
本物の心を見せること。
まぁ、アルテイシアさんの言うところの
「マーケティングで自分を演出しちゃってほんとの自分が見えなくなってる」状態なのかもしれないけど。
本人が悦に入ってんだから始末に困るわな。

作者が後書きで「煩雑すぎる心理描写を少なくした」と書いているように、
明暗」に比べればずいぶんとわかりやすいつくりになってると思う。
ほんとはこっちの方が好みなんだけど、でも、
明暗」を読まないとこっちもわからないしなぁ…。
そして多分、漱石さんだったらこの終わり方じゃないのかも…とちょっと思う。
それまでが難解(笑)だったのに、終わりだけすこーんと明るいんだもん。

それにしても、こういうのが書けるっていうのは
ほんとに、日本語の本に愛着を持っているんだなぁと思う。
愛着と才能が結実したらこういうものになるんだなぁ。ウラヤマシス。


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