今まで、東野圭吾の本は2冊しか読んだことなく
(「
放課後」と「
白夜行」ね)
これが3冊目なのですが、
この3冊の中では文句なしに一番でしょう。
数学の研究者を目指しながら、挫折し、高校教師をしている石神。
彼は数学の面白さをわかろうともしない生徒達に
ただ黙々と公式を教え続ける日々。
そんな彼の心のオアシスは、隣の家に娘と二人暮らしの靖子。
彼女が働く弁当屋に、毎日、弁当を買いに行くけれど
特に話しかけることもない、そんな日常。
ただ、ある日、彼女の部屋で異変が起こる。
離婚した男の金の無心から逃げ回っていた彼女は
ついにその男を、娘と二人で殺害してしまったのだ。
そして、石神は動き始める。
ただ、彼女を守るために。
・・・さっさと自首しちゃえばいいような気がしたけどな。笑
わたしの中で、石神はヒーローだ。
ヒーローというのは、多分、こういうものなんだろう。
ヒーローがかっこいいとは限らない。
ヒーローが力強いとも限らないし、
ヒロインがヒーローに恋をしてくれるとは限らない。
でもヒーローはヒロインを守り続けるんだ。
たとえ、どんな手を使ってでも。
靖子と娘には、ただ、ありのままを
(元夫のこと以外)話せばいいし、
聞かれたこと以外、答える必要はない。
そうとしか石神は指示しなかった。
彼女達が頭を悩ませることがないように。
彼女達は、ただ、石神の敷いたレールの上を歩けばよかった。
石神はレールを敷くために、彼の才能の全てを注ぎ込もうとする。
靖子達は、石神の敷いたレールの内容すらわからないまま。
何故、警察は自分達を疑わないのか。
それすらもわからないまま。
だけど、靖子達は石神には感謝をしているけれど
やがて、それが重荷になってくる。
石神は自分達を守ってくれている。
それを裏切るわけにはいかないのではないか?
彼は自分達が殺人をしたことを知っている唯一の人間で
彼が存在していることで、自分達には恋愛の自由すらなくなるのでは・・・。
好きな男がいることが石神に知られたらどうなるんだろう。
ほんまにぞっとする。
これもまた人の心の動きとして当然なんだろう。
石神がどんなに守っても、彼女にはそれは届かない。
この事件に首を突っ込んできたのは、
石神の大学時代の同級生、湯川。
彼もまた天才的な物理学者。
同じく天才として認めていた石神の動きに気がつき、
独自に調査を始める。
そこで推測できる様々な事柄に、湯川は愕然とする。
止めなければ。でも何を止めるのか。
湯川が自分のことに気づきはじめてる、
それに気がついた石神は・・・。
この石神の身仕舞いの仕方に感動した。
石神は、彼女に幸せに生きて欲しいと思ったんだろう。
だから、全てを湯川が話してしまって
彼女が泣き崩れたとき、石神はどう思ったんだろう。
靖子が全てを知ったとしても、
石神の元へ来ることはないような気がする。
そして石神の最上の愛も崩されてしまう。
この終り方がなんか歯がゆいけれど
これこそがヒーローのあり方のような気がするんだよなぁ。
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