地味な女子の読書とか映画とか。

現在、海外暮らしのため 不定期に更新しております。本が読みたい。
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花村萬月:風転

風転〈上〉風転〈上〉
花村 萬月

集英社 2003-09

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大学受験に失敗した諸口ヒカルは、有名作家である父親に抑圧され、鬱屈した日々を送っていた。恋人の萌子とオートバイだけが救いだった。しかし、萌子が妊娠してしまい、追い打ちをかけるように、父の盗作事件が発覚する。そして、ついにヒカルの鬱屈は臨界点を超えてしまうのだった…。風に吹かれて、転がって、痛いほどに純粋な青春が鉄馬に乗って、走り出す。行く先は、再生か破滅か。


人ってそんなにすぐには変われない。
・・・んだよー。そうだよー。
だから萬月さんのこのテの本はこのくらいボリュームがないとダメなわけ。
たびを」しかり「ぢん・ぢん・ぢん」しかり。
(「惜春」と「幸荘」はあれはあれでよいのですが)

とにかく、最初の頃のヒカルはもうただ苛立ちの日々。
ほんまは弱っちいくせに突然キレたりするような子。
口先ばっか論理武装してるけど、浪人しちゃったり中途半端さに
更に苛立つような。
バイク買って格好つけたいんだけど、親にかくれてこっそり買ったから
隠す場所も困るし、まともに乗りこなせてもいない。
かわいい彼女がいるんだけど、つい彼女の後輩にもなびいてしまったり。
親父が大嫌いなのに、その親父に歯向かえないような。そんな日々。

だけど、彼女の妊娠→流産事件と父親の盗作事件から諸口家は崩壊し始める。
突如鬼の首をとったように父親を糾弾し始めたり
母親を犯そうとしたり。
ついに母親は家を飛び出し、ヒカルの目の前には醜態の父親が・・・

・・・お父ちゃん、切り刻むんですの。この子。
で、バラバラになった父親の死体を屋根裏部屋に隠してバイクにまたがる。

鉄男は共産党員の家に生まれ、やがてヤクザになった。
頭もいいし、凄腕なんだけど、ついつい一匹狼でやり過ぎてしまい
組織から追われる羽目になる。
ある日、身を隠すためホームレスになっていた鉄男は
鬱屈していた頃のヒカルと出会う。
彼らは急速に接近する。
自分の目の前で素直になるヒカルを見ているうちに
鉄男の中の教育欲(?)が目覚める。

で、ついに二人は旅に出るわけです。

二人の物語であって、同時に二人の物語だけではない。
ヒカルの彼女だった萌子。美人で、恵まれている女の子。
萌子の後輩だった夏実。いじめられっこで母親からも冷たくあしらわれて
だから男に身体で近づいてしまう女の子。
ヒカルの母親の真理子。
彼女達の物語でもある。

この夏美ちゃんってのがもう痛々しくてつらいんだよねぇ。
最初の方は、ただヒカルに付きまとって、妊娠した萌子に対して嫉妬したり
そういう女の子だったんだけど、やがて彼女の内面がさらけ出される。
もう、誰も周りに居なくなった。そう思った彼女は
顔面を鏡に打ち付けて、ぐしゃぐしゃにしてしまう。
顔中包帯をまかれ、病院のベッドに寝ている彼女にも世間は優しくない。
ちょっとした優しさについ縋りそうになれば、
手ひどい仕打ちを受けたりして。どんどん疑心暗鬼になってっちゃう。

萌子は結構、なんでも持ってる女の子。
それに嫉妬する、何にも持っていないと思っている女の子が夏美。
この対比がほんまに痛々しい。
だから、警察官の人達が萌子に向かって
「この子のことはあなたのような人にはわからないだろう」っていうシーンで
思わず唸るよねぇ。でも萌子は「わからない」ってことがわからないんだ。

ヒカルの母親である真理子。
1回目、家を飛び出したときは、義弟のところへ転がり込んだ。
でも、毎夜のように迫ってくる若作りwの義弟に嫌気がさし
海岸を歩いているところに出会ったバーに入り込む。
そこで、そこのバーテンとマリファナをしながら一夜を過ごす。
二人の関係が深まっていくにつれ、彼は保守的になり
やがて真理子はそのバーから離れる。
おうちに帰ろう。真理子はそう思った。
もう一度、家族3人でやり直そう。
そして家に帰った瞬間に、腐乱して、もはや液体となった夫の死体と対面する。
殺された夫。殺したであろう息子。
全てを振り切るように、真理子は京都へ旅に出る。

そして、鉄男とヒカル。
二人はオートバイで日本中を駆け巡る。
ただ、警察に二人とも追われているから、派手なことはできないけれど。
鉄男は、オートバイの乗り方、カーブの曲がり方。キャンプの仕方。
自分の知っていること全てをヒカルに教えようとする。
そしてヒカルも、あんなにイラついていた日々が嘘のように
彼の教えを吸収していく。
出会った頃に比べて、日々、変化していくヒカルが鉄男はかわいくて仕方ない。

やがて、二人を(正確には鉄男を)追う男が現れる。
彼は、夏美に近づき、真理子に近づき、そして萌子に近づいていく。
そうして彼女達から手にした情報を持って追い詰めていく。
彼は、名前もない。萌子を夢中にさせ、二人で車に乗り
鉄男とヒカルの走った線をなぞる旅に出る。

この男が最後までイマイチよくわかんないキャラだったのが残念。
なんで鉄男を追ってんのか。(まぁ組織の人間だったんだろうけど)
なんで、真理子や萌子に近づいたのか。
彼女達に見せた姿はどこまで彼の真実の姿だったのか。
で、萌子ちゃんはどこまで引き金を弾き続けてしまうのか・・・orz

この彼が、萌子と二人、車で鉄男たちの後を追っかけてるときに
しみじみと言う。
有名観光地じゃなくても、日本中の、知っておいたほうがいい場所に
鉄男はヒカルをそれとなく連れてってる。社会科と地理の実地教育だ。
なんかねぇ。これはすごい愛情だなぁ・・・と思った。
心の中、頭の中で言葉が渦巻いているようなヒカルに
鉄男は、「これは」と思うものは全て教えて、
やがて小説を書くように勧める。
この追われる立場じゃなくなったら。お金と自由を手に入れたら
俺はお前に存分に書かせてみたい。

だから・・・ねぇ。
最後の最後で驚愕して、ちょっと嫌になるんだ。
でも、結局一番、罪を背負って生きていくのは萌子なのかもしれないけれど。


風転〈中〉風転〈中〉
花村 萬月

集英社 2003-10

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風転〈下〉風転〈下〉
花村 萬月

集英社 2003-11

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